用語集

震災トラウマ

震災トラウマとは、字のごとく震災を原因として生じたトラウマのことです。東日本大震災は、地震だけでなく、そこから派生してきた津波、原発事故、風評被害、コミュニティ崩壊など幅広い問題が生じてきており、また、今後もそれらへの取り組みは続いていくことでしょう。

私たちJUSTも、きわめて非力ながら、その後方支援の末端につながらせていただいております。詳しくは「東日本大震災 被災者支援 特設ページ」をごらんください。

また震災トラウマを対象とした自助グループ「post311」を運営しております。

自然災害を心的外傷として体験するときは、

I 警戒期
II 衝撃期
III ハネムーン期
IV 幻滅期

という四つの段階を経るものと言われています(Raphael, 1986)が、地震のように予測ができない自然災害は、「来るぞ、来るぞ」と警戒している時期がなく、いきなり衝撃期から始まると言えるでしょう。

とくに2011年の東日本大震災のような災害では、広い地域が一挙に混乱におちいり、その心的外傷は質量ともに深刻であり、今後長い時間をかけて取り組んでいかなければならないことが予想されます。

衝撃期が過ぎると、救助活動あるいは相互の助け合い、外部からやってきたボランティアと地元被災者の人々のあいだで生まれる高揚した気分があり、ハネムーン期がやってきました。これが過ぎると、失われたものの大きさがあらためて実感されてきて、厳しい現実を認識する力が回復され、幻滅期が始まります。

幻滅期では「やり場のない怒り」を多くの人が持つようになり、そのはけ口を求めて犯人捜しが始まったり、さまざまな混乱が起こされたりします。2011年6月初めに日本の国会議員たちが内閣不信任をめぐってあっちこっちへ駆けずり回った混乱は、そのわかりやすい例です。

震災による心的外傷は、大きな地震の揺れ、または津波の来襲という一回性のショックだけによって発生するのではなく、喪失体験、凄惨な場面の目撃、当たり前のように送っていた日常生活が送れないストレス、ひごろ覆い隠されていた数々の事実の露呈、地域社会の崩壊や変質、再建が長期にわたることへ感じる疲労感など、いくつもの要因が重層的にかさなって起こるものと考えられます。

被災地のすべての人が、同じPTSDにかかるというのも間違いです。地震が起こる前から、それぞれの人は異なった成育歴、つまり人生の歴史を生きてきました。そこから培われた素地が、災害によってどのように変わっていくか、個々人みな違うと考えられます。
そのため、被災者の心のケア=PTSDの治療、という考え方も正しくありません。治療者たちによるPTSDの治療と、ふつうの人から人への心のケアは、連携しながらも並行して行うことができるはずです。

私たちJUSTは、自分たちが異なる要因から起されたトラウマからのサバイバーであることから、きわめて非力ながらも、その後者においてできることを坦々をさせていただきたいと考えております。