用語集

摂食障害

摂食障害(せっしょくしょうがい / eating disorder)とは、精神疾患の一つで、食(食べ物、食べること)をめぐっての強迫的な行為が続くことを症状とします。過食症拒食症に大きく分けられますが、その二つをサイクルとして繰り返すタイプも含め、態様はじつにさまざまです。

一般に抑うつ傾向を持ち、アルコール乱用、自傷行為などを併発していることがありますが、過食と拒食を繰り返すタイプでは、過食のときに鬱(うつ)ぎみ、拒食のときに躁(そう )ぎみであることが多いようです。

過食や拒食が行き過ぎて、身体的な負担がかかり、死に至ることも少なくありません。過食では、血糖値がずっと高いままでいることにより糖尿病や肥満など、拒食では逆に低血糖、栄養不良、骨粗しょう症、脳萎縮などが死に至る直接的な原因となります。

食べている行為を人前に見せるかいなか、ということも、摂食障害者にとっては大きな問題です。まったく人前で食べることをしたがらない人もいれば、人前ではふつうに食べ、あとでトイレへ行って食べたものをすべて吐くという人もいます。
吐くことを常習としている人は、吐くために指をつっこんだ先に咽頭潰瘍ができたり、利き手の指や甲に胼胝(吐きダコ)ができたりします。

下剤を乱用し、下からの排出によって、食べたものを身体が摂取しないようにしている人もいます。

母をはじめ親との関係に遠因があり、それが体型へのこだわりや肥満への恐怖、対人恐怖や女性性への否定などに結びついて発症していると考えられています。

食べ物をのみこむのが困難であるという嚥下障害とはっきり区別するため、中枢性摂食異常症とも呼ばれます。
発展途上国よりも、食べ物が豊富にある先進国に、圧倒的に多いとされ、それゆえに現代病などとも呼ばれます。男女比では、女性のほうが多く、国によって多少の差がありますが、男性はすべての症例の15%以下といわれています。

1979年イギリスの精神科医ジェラルド・ラッセル(Gerald Russel)によって過食(bulimia)が症状として提唱され、1980年アメリカ精神医学会によってDSM-IIIへ含められることになり、摂食障害として承認されました。
1983年、有名な歌手であったカレン・カーペンターが32歳で摂食障害で亡くなったことが報じられ、摂食障害という病気の存在を広く知らしめるきっかけともなりました。