アルコール依存、対人恐怖、うつ病、ひきこもりの当事者、その親や配偶者などを経験している人で、自らの体験に基づく助言活動をする人を養成することを目的にしています。
対象者
- アルコール依存、対人恐怖、うつ病、ひきこもり等の当事者、または、その親や配偶者などを持つ人で、自らの体験に基づく助言活動をしたいと考えている人。
- 過去に当事者であったこと、もしくは、現在も当事者であることを自覚している専門家。
- 上記に準じる人。
講義内容(全200時間)
- 精神医学
統合失調症/うつ周辺/双極性障害/ノイローゼ周辺/PTSD/アディクション/薬物療法/地域医療/家族介入
- 心理療法
認知行動療法/面接法(成人・児童)/ジェンダー問題/夫婦同席面接・家族療法/児童・小児/家族精神療法/グループ療法/精神分析/PIAS/心理テスト(アセスメント)
斎藤学からのメッセージ
1980年台、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス郊外にあるヘーゼルデン・インスティテュートという、アルコール・薬物依存者回復施設に滞在した際、”リカバード(回復者)カウンセラー”なるものを初めて知った。そこでは、医者も精神科医も非常勤で、専ら回復者カウンセラーがセラピストを勤めているのが印象的だった。
その後訪れた、フィラデルフィアのペンシルヴェニア大学のアルコール・薬物専門外来でも、数人のリカバード・カウンセラーが、正規のカウンセラーと一緒に働いていた。リカバード・カウンセラーの方はAA(アルコホリックス・アノニマス)やNA(ナルコティクス・アノニマス)を使って断酒・断薬を達成してから18ヶ月ほどの研修を受けてカウンセラーとしての資格を与えられていた。
日本全国に約90ヶ所の施設がある「ダルク(全国薬物依存症者家族連合会)」でも、元嗜癖者がカウンセラーを勤めている。つまり、既に沢山のリカバードないしリカバリングのカウンセラーが存在している。
男女のうつ病者や女性の摂食障害者や、主として男性の自己愛的対人恐怖者(「ひきこもり」の多くはこのタイプ)たちは、医師や心理セラピストによる「治療」が効果を持たないことが多いことを考えると、リカバリング・カウンセラーによる自助的で、シェアリングを多用する回復の場が有効ではないかと考える。
回復者や回復途上者に自らのアディクションについての経験を、同じようなアディクションに悩む人の回復に役立てるために、最低限の精神医学や精神医療の知識を学んでもらおうというのが、この講座の主旨である。
自分にとって負の遺産と思えるような経験が、人のために役立つわけで、人をエンパワーできる現実を知ることで、本人も次のステージに移行できる。
それぞれの経験と個性を活かしたリカバリング・アドバイザーが増え、職業として認められ、多くのリカバリング・アドバイザーが活躍するのが夢である。